カメラ雑学 〜F値の謎〜

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なんでF値って1.4の倍数なんだろう?そんな疑問に答えます!

  

こんにちは、ちびたです。
今日からカメラ雑学のコーナーを始めたいと思います。初回の今日は、みんな大好きF値の謎に迫ります。
F値についてよく聞くのは「明るい(開放F値が小さい)レンズが良い」ということです。その理由は、F値が小さいとよくボケる、そしてシャッタースピードが早くなり、手ブレ写真が少なくなるからです。また明るいレンズは、画質が最高になるF値が小さい(F2のレンズだとF5.6あたり)ので、絞って使っても描写力が高いレンズです。
そんなF値ですが、僕が疑問に思っていたことが二つありました。
①なぜ一段が2倍でなく、1.4倍に相当するのか
②なぜF2, 2.8, 4, 5.6, 8, 11を基準にして、F1.8, 2.5, 3.5...などを使わないのか
最初の疑問はすぐに解決することです。二つ目の疑問は4ヶ月越しにやっと分かりました。それぞれ、詳しく見ていきましょう。

①なぜ一段が2倍でなく、1.4倍に相当するのか
これはF値の定義を紐解けばわかることです。

F値 =  焦点距離 ÷ レンズの有効口径

F値はこのような定義で決められています。レンズの有効口径とは、ふつうカメラのレンズはたくさんのレンズからなりますが、複数あるレンズをまとめた一つのレンズとしてみたときのレンズの直径です。焦点距離はそのまま、レンズの焦点距離(50mmなど)です。
このことから、単焦点レンズなどの明るいレンズの前玉がとても大きい理由がわかります。特に、超広角単焦点レンズは、広い画角を持ちながら、F値が小さいので太短いレンズになっています。
それから、F値焦点距離が大きいほど、大きくなるので、多くのズームレンズでズームしていくと勝手に開放F値が小さくなる理由もわかります。
次に、 F値と明るさについて理解を深めるために、この式を変形します。

レンズの有効口径 = 焦点距離 ÷ F値

このように変形すると、F値の変化によってレンズに入る光がどれだけ変化するかが分かります。光量は、面積で考えるので、シャッタースピードと合わせて、次の式が成り立ちます。
 
光量 = (レンズの有効面積 ) × シャッタースピード
   = ( 円周率 × レンズの有効口径の2乗 ÷4 )× シャッタースピード

これ以上の式変形はややこしくなるのでやめておきます。 ここで重要なのは、光量はレンズの有効口径の2乗に比例するということです。その前の式から、F値が2倍になるとレンズの有効口径は1/2になります。光量は有効口径の2乗に比例するので、1/2の2乗、1/4になります。露出を考える際の一段というのは2倍や1/2を指すので、光量を半分にするには、F値を1.4倍(つまりルート2)するとちょうど良くなります。光量はF値の2乗に反比例するから一段が1.4倍になるんですね。

②なぜF2, 2.8, 4, 5.6, 8, 11を基準にして、F1.8, 2.5, 3.5...などを使わないのか
これは長らく疑問だったのですが、最近やっと解決しました。当初は2や4というキリのいい数字が覚えやすかったからだと思ったのですが(これも間違ってはいない)、実はもっと単純な話でした。
時代はフィルムカメラまで遡ります。アナログとデジタルの根本的な違いは、アナログは1と0の微妙な数字も表現できるが、デジタルは1と0でしか計算出来ないということです。これはF値でも同じだったのです。当時のフィルムカメラはF3やF7など、ダイヤルを回せば微妙なF値も設定できました。現在のようなクリック感のあるダイヤルではなく、スムーズに連続的に回るツマミのようなものだったと考えられます。そこで、目安として印字されていたのがF2をはじめとする代表的なF値だったのです。今のようにExif情報などで設定値を記憶できなかったため、多くのカメラ愛好家は覚えやすい、F2から1段ずつずらしたキリのいいF値を使っていたのです。これが現代にも生きているため、未だにF2.8など一見キリの悪いF値も議論する際に使われているのです。F4とF3.5の微妙な違いなどは分かりづらいため、現在でもある意味合理的な方法です。

F値についての素朴な疑問が全て解決したので情報をシェアしたく、この記事を書きました。これからも知らなかったけど、特に深く考えていなかったことなどを掘り下げて書いていきたいと思います。